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実は死なないマンボウ『マンボウのひみつ』

4分くらいで読める

「死にやすいマンボウ」という都市伝説

めちゃくちゃ死にやすいマンボウ、というネタが定期的にツイッターで拡散されています。

  • まっすぐしか泳げないため岩にぶつかって死亡
  • 潜ったら水が冷たすぎて死亡
  • 朝日が強すぎて死亡
  • 海水の塩分が肌にしみて死亡
  • 寄生虫を殺すためにジャンプして水面に当たり死亡
  • 近くに居た仲間が死亡したショックで死亡

など。

それらは果たして本当なのでしょうか?

帯コメント・イラストはさかなクンさん!

大学生の頃、マンボウを飼育していた水族館でバイトしていたこともあり、そんなに死にやすくはないだろう、と予想はついていました。

たまに死んでしまうこともありましたが、それには前兆があります。

日々、少しずつナナメに泳ぐようになり(バランスがとれなくなる?)、げっそり痩せて皮にシワが寄ってきます。出勤するたびに弱っていくマンボウを見て、心を痛めたのを覚えています。

ですので「死にやすい」という都市伝説は半信半疑だったものの、きちんと調べたことはなかったため、書店で見つけた『マンボウのひみつ』を読んでみました。

まだよくわかっていないマンボウの、現時点でのまとめの書

まず、この本は研究書ではなく、中学生からでも読みやすい「自由研究の発表」(「おわりに」p.184より)、というスタンスの作品です。

半分は、まだまだ研究する余地はあるものの、現在(この本の執筆時点)までにわかっているマンボウについての情報を、分類・生態はもちろん、歴史や風俗、そして食べ方までも網羅的にまとめたもの。

残り半分は、著者がマンボウになぜハマったのか、どのようにマンボウが研究されてきたか、マンボウ研究を進めるにあたっての苦労話、など体験談的な内容です。

その分、研究書にはない人間味を感じながら楽しく読み進められますし、中学生・高校生をマンボウ研究に勧誘するような意図もひしひしと感じる、意欲作となっています(笑)。

マンボウつながりで、「まんぼう」がニックネームのアイドル、桐原ユリさんのPVも唐突に貼っておきます

巻頭にカラーページがあり、マンボウに関する写真が何枚もまとまっているのですが、その注釈がちょっとした伏線になっていて、読み進めていくうちに意味がわかってくるという、謎解き的な楽しみも。

コラムの背景にあしらわれたマンボウのシルエットイラストが、実は複数の種類のマンボウが使われていたり、細部にも制作者の愛が感じられます。

そのイラストは後半まで読み進めるとシルエットだけで種類が判別できるようになりますが、逆にマンボウの種類について解説される前までは、シルエットが2種類使われていることにすら気づきませんでした。

知識が世界の解像度を上げる、という事実を身をもって感じられました。

デマでも拡散されるのがSNS

最初に挙げたマンボウの死因に関連して、インターネットやSNS、メディアの弊害についての記述も印象的でした。

そのほとんどがインターネットで醸成された根拠のないデマにもかかわらず、SNSで拡散され、メディアに取り上げられ、音楽やゲームのモチーフにまでなって、世界中に広まる都市伝説となりました。

それについてメディアから著者に取材が来るたび、デマだと伝えてきたものの、その時点では既にインターネット上の情報をもとに番組内容が作られているため、あまり意味がなかったそう。

 

真実かどうか、に関係なく刺激的でわかりやすい情報が拡散されてしまうのがSNS。

きちんと自分で確かめる一次資料に当たる、という姿勢は情報過多の今こそ必要です。

マンボウに関して死因以外にも有名な話がこちら。

  • 1回の産卵で3億個の卵を産み、生き残るのは2匹だけ
  • ライフル銃で撃っても貫通しない

これらもインターネット上でたびたび見かるウワサですが、本当なのでしょうか。

この真偽についても本の中で言及されていますので、ぜひ一度お手にとって、自分で確かめてみてください。

作品情報・関連作品

澤井悦郎マンボウのひみつ

2017年 岩波書店(岩波ジュニア新書)刊

人気者なのに謎すぎる魚・マンボウ。なんであんな形なの? 夜光る、すぐ死ぬ、おぼれる人を助けた、3億個産卵して生き残るのは2匹……伝説の真相は? 古い文献探しから先端技術での生態調査、料理やサブカルまで、マンボウのひみつを解き明かそうと挑んだ若き研究者が、悲喜こもごもの研究ワールドへご招待!